感光性樹脂フィルム(フォトポリマーフィルム)

使用方法

◆フィルムは光を通さない筒などに入れて湿気のない涼しいところで保管して下さい◆
(常時冷蔵庫または梅雨から夏期は冷蔵庫に)

*ブログ(カテゴリー・フォトポリマー)もご覧下さい。http://hanga.seesaa.net/

Puretch

銅版(金属版)腐蝕用ポリマーフィルム。(フォトエッチング用
現像は、露光した後、バットに入れた現像液に浸けてすぐにスポンジで数十秒やさしく擦ります。浸けて数分間待つ必要はありません。
現像後、ポリマーフィルムが防蝕膜になるので、腐蝕液に浸けて銅板を腐蝕させます。


Skylight

銅版を腐食しないでプリントすることができます。(ノンエッチング用 ー フォトポリマー凹版)
写真製版用のノンエッチング凹版向けの厚いフィルムです。また、低解像度画像のフォトエッチングや、電気メッキマスクとしても使用できます。
現像後、ポリマーフィルムに凹凸ができるので、銅版画と同じようにインクを詰めて刷ることが出来ます。 アルミ板、アクリル板(PETG) 、木など多様な支持体(基盤)にフィルムを貼って版を作ることができます。(木の板にしっかりと貼るためには、板の表面を目止めしサンドペーパーで磨いたり、接着剤を使用するなどの工夫をしてください。)

露光時間のテストをして下さい。
最高の結果を得るために、露光させる少なくとも1日前にフィルムを版に貼ったほうがよいでしょう

必要な材料:
•安全な露光機
•磨かれた金属板または透明なアクリル板など
•酢と食塩(酸化膜除去のため)
•金属の脱脂に醤油またクリームクレンザー
•カッターナイフ
•新聞紙
•ペーパータオル
•粘着テープ
•消毒用エタノール
•霧吹きスプレー
•セルローススポンジ、または綿巻き(薬局応急処置用)
•炭酸ナトリウム(※重曹、炭酸水素ナトリウムではありません)ー 現像・フィルム除去のため
•ゴムベラまたは中程度の硬さのブレード(ゴム部分)を備えたスキージ、わずかにサンドペーパーでブレードの角を磨くと使いやすくなります。
•フォトトレイ(バット)
•タイマー
•銅版画用プレス機
•ホットプレート(電熱器、ウォーマー)
•De-Solv-it(オプション)ー 汚れ除去のため
•アンモニア水(オプション)ー フィルム除去のため
• 蒸留水(オプション)
•アクアティントスクリーン(オプション)
•赤外線温度計ガン(オプション)

[原稿(オリジナルアートワーク)の用意]
2つの必要条件:イメージの部分は不透明で紫外線を遮断できて、イメージのない部分は透明でなければなりません。
これは、従来からある写真製版の原稿(ポジフィルム)と同じものを使用できます。
例えば、コンピューターからインクジェットプリンター(またはレーザープリンター)でOHPフィルムにプリントアウトしたイメージ、ライノタイプイメージセッターやハーフトーンフィルム、モノクロ写真のレーザーコピー、ダイヤマットに手描きのイメージなど。

● 原稿の作り方 (2023年2月18日に「フォトショップでイメージを加工する方法の 7. 」及び 「8. 」を訂正加筆しました)

※Skylightのポジフィルム(原稿)について
フォトポリマー凹版には、高解像度のビットマップは機能しますが、影の範囲が失われます。 黒のレベルを約70%K くらいに明るくして、アクアチントスクリーンの露光を必要とせずに、単一の画像で露光して黒を印刷できます。アクアチントスクリーンの露光を使用する場合は、黒レベルを調整する必要はありません。

Puretch は、 黒のレベルを約90%Kに。
プリンターの機種:HP(ヒューレットパッカード)の Photosmart 5521を使用しプリントアウトした場合です。プリンターのメーカーや機種により違います。

プリンターのインクは、黒色のインクだけでプリントします。

[版の用意]
金属板の場合:汚れの除去酸化膜除去脱脂が必須です。
版の表面が滑面であれば研磨(サンドペーパーやコンパウンド- 金属磨きなど)する必要はありません。版のプレートマークは削って磨く方が良いでしょう。
・汚れの除去 版の表面はDe-Solv-it等で汚れを除去し、石鹸または食器用洗剤で水洗します。もし、版の表面をコンパウンド(金属磨き)で磨いた時はその汚れをDe-Solv-it等でしっかりと除去した後、石鹸または食器用洗剤で水洗します。
・酸化膜除去 酢と塩を使用します。
・脱脂 消毒用エタノール、または、醤油、または、クレンザーで脱脂します。脱脂後は版の表面を指で触らないように注意します。

アクリル板の場合:
板が新しい場合は、保護フィルムをはがすだけです。アクリル板の表面に指紋が付かないようにしてください。消毒用エタノールを使用して指紋を除去できます。アクリル板を再利用する場合は、フォトポリマーの痕跡をすべて除去します。

[これからの行程(現像が終わるまで)は、フィルムが感光しない薄暗い室で行います]
短時間の低いレベルの間接的な太陽光や室内のライトはフィルムに影響しないでしょう。しかしできるだけ光に曝さないようにしなければなりません。電球型蛍光灯は紫外線量が少ないので離れていれば影響はないでしょう。天気の良い日中はブラインドやカーテンを閉めて紫外線を遮断します。作業に支障のないほどの薄暗さで良く、暗室は必要ありません。
[感光性樹脂フィルムを貼付ける] 
感光性樹脂フィルムは、感光性エマルジョンを2枚の保護フィルムでサンドイッチした3層構造です。(表側の1枚は透明な保護フィルムで、裏側の1枚はマットな保護フィルムです。)
表側の透明な保護フィルムは版に貼付ける間は剥がさずに付けておき、そして露光します。裏側(丸く巻いた内側)のマットな保護フィルムは版に貼付けるために剥がします。裏側の保護フィルムを剥がして、フィルムを平らに置き、そしてエマルジョンがむき出しになった側を版に貼ることができます。皺や折り目はプリントイメージに現れてしまうのでフィルムは注意深く扱うようにして下さい。
また、作業環境は清潔にし、ホコリなどが極力入らないようにします。注意深く行っても仕方なく入る微小なホコリなどは影響しなこともあります。

手順
ロールからフィルムを切り取ります。(もし版の表面全体を露光するなら、フィルムは版の周りより2~3cm大きく切ります。また、小さいフィルムを版上の選んだ箇所に使うこともできます。)
裏側の保護フィルムを剥がすには、テーブルに梱包用のガムテープの粘着面が上側になるように貼り、そこにフィルムの裏側のコーナー(角)を押し付けて引っ付けます。ガムテープからコーナーを引っ張るようにすると裏側の保護フィルムを剥がすことができます。皺からフィルムを守るために貼る直前まで保護フィルムを剥がさない方がよいです。
1) 梱包用のガムテープを粘着面が上側になるようテーブルに貼ります。 <Photo-A>
2) ロールから感光性樹脂フィルムを任意の大きさに切ります。
3) 感光性樹脂フィルムの裏側(丸く巻いた内側)の端(コーナー)をガムテープに押し付けて貼り、その角の部分を爪の裏側で軽くこすり、感光性樹脂フィルムを手前斜め上45度に引っ張り上げるようにすると、コーナー近くの保護フィルムが分離するのでガムテープに引っ付けたところを第3の手のようにして、他の二つのコーナーを両手で持って皺にならないように引っ張り剥がします。 <Photo-B>
4) 数枚重ねた新聞紙などを広げた上にフィルムを剥がした側を上向きにしておきます。その横に版を置き感光性樹脂フィルムと版の両方に霧吹きで水道水(または 蒸留水)をたくさん吹きかけます。 この時、新聞紙や版にホコリが無いように気をつけます。<Photo-C>
5) 感光性樹脂フィルムの裏側の保護フィルムを剥がした面を版にかぶせるようにゆっくりと版の端から置いてゆく。もし気泡が入ったらフィルムを持ち上げて外へ追いやるようにし、シワを無くすように、ある程度滑らかになるようにします。もう一度、感光性樹脂フィルムの表面に霧吹きで水をたくさん吹きかけます。 <Photo-D>
6) ゴムベラ(またはシルクスクリーンで使う10cm~15cmくらいのスキージー)を使って中央から端に向かって水と気泡を追い出すようにして最初は軽く、その後、力を加え何度もこすります。 <Photo-E>
7) きれいに貼れていることを確認してタオルで水を拭き取り、フィルムの端をプレートマークに沿うように手のひらで押さえつける。そして版からはみ出ている余分な感光性樹脂フィルムをカッターを使ってプレートマークの斜めの角度に沿うようにカッターを動かして切り取ります。 <Photo-F>
8)この時点で刷りを行う時と同じ圧力でエッチングプレス機に通すと、より密着して版の端も剥がれにくくなります。 
版にフィルムを貼った後、表面温度が48℃~50℃のホットプレートで15分間加熱。光がフィルムに入らないようにアルミトレイやアルミホイルなどで覆う。熱くし過ぎるとエマルジョンを歪めてしまいます。その後、暗所で版を冷まします。フィルムを貼ってから一晩は置いた方がより結果が安定します。これで版を露光する準備が出来ました。

[版を露光する]
適切な露光時間は、光源や原稿によって違いますのでテストしなければなりません。
感光性樹脂フィルムの表側の保護フィルムは露光の間も貼っておきます。(べとつくエマルジョンで原稿を損なわないようにするため。露光後に注意深く剥ぎ取ります。)
版に貼ったフィルムの面を上にして露光テーブル(バキューム装置)に置きます。それから原稿(OHPフィルムなどのポジフィルム)の印刷面(または描画面)を必ず下にしてガラス板で版に密着させ、そして紫外線を照射して露光します。<Photo-G> 露光時間は紫外線次第で著しく変化します。(光源の種類と照射距離と使用する原稿の違いによって変化します。ポジ原稿の不透明部分(黒場と白場の割合など)もまた露光時間に影響します。光線の種類や照射距離によって違うので、テストしてデーターをとる必要があります。光源の距離は、プレート(版)の対角線の1.5倍以上が良いでしょう。
※注意:版に貼ったフィルムの面と原稿の印刷面を密着させる。

A

B
ポリマーフィルム

B
ポリマーフィルム
C
写真製版
D
写真製版
E
写真製版
E
写真製版
F
写真製版
刃は上から下へ動かす時にフィルムを切る。逆にするとフィルムがめくれ上がる
F
写真製版

G
ポリマーフィルム
固めのスポンジの板の上にガラス板を置き、周囲をクリップでとめている。

G
写真製版
H
写真製版
手のひらで版のエッジを擦るようにするとめくりやすくなります。
写真製版
感光して青く変色

   

[現像]
[1%の炭酸ナトリウム水溶液で版を現像する](現像液の濃度、水温は正確に)
炭酸ナトリウムは炭酸ソーダまたはソーダ灰とも呼ばれています。
炭酸ナトリウム1%(10gの炭酸ナトリウムを990g/mlの水道水に溶かして、合計1リッターにします。)のぬるま湯(20℃±1℃)の水溶液を現像用としてバット(トレイ)に用意する。(現像液の量は必要に応じて作って下さい。)
露光後すぐに現像しますが、その前に表側の保護フィルムを剥がします。

1)まず最初に一番上(表面)の保護フィルムをゆっくり剥がします。剥がし方は版に手のひらを45度くらいに当てて擦ることを繰り返す。または、セロテープを輪っかにしてコーナー(角)に引っ付けて持ち上げる。<Photo-H>
2) 現像時間
Puretch ― 1分(にタイマーを合わす)
Skylight ― 2分(にタイマーを合わす)
3)版を現像液に入れる。
4)現像は、バット(トレイ)に入れた現像液に浸けて、すぐにスポンジまたは綿巻きで表面全体をやさしく擦ります。(指定の現像時間)
5)現像液から取り出し、冷水で洗う。
6)Puretchの場合のみ:版に酢(食酢を水で2倍ほどに薄めて)をやさしく約30秒間スプレーしてエマルジョンを安定(定着)させる。その後、冷水で濯ぎをする。
7)ペーパータオルなどで水気を取る。
8)版は10~15分間、48℃~50℃の電熱器やホットプレート(ウォーマー)で加熱し乾燥させる。
9)版が冷えたら、再度1~2分間、紫外線照射(または直射日光に当てる)し、版を強くします。フィルムは濃い青色に変化していきます。
Skylightの場合:出来た版は、紫外線露光と熱く熱せられたので、一晩湿気の少ない暗所で新聞紙などに包んで保管するほうがよいでしょう。
Puretchの場合:腐食液に浸けて銅版を腐食させます。現像後のポリマーフィルムが防蝕膜になります。エジンバラエッチ液の場合は約15分、通常の塩化第二鉄液の場合は約25分間腐食液に浸けます。腐食時間は適宜調整してください。

[刷り]
Skylightの場合:現像された感光性樹脂フィルムの版の刷りは、あたかも普通の銅版画のようです。ただ、版面は金属版より弱いので繊細に扱います。インクはゴムローラーで詰めます。インクの拭き取りに寒冷紗を使用するときは、柔らかい寒冷紗で拭いてください。硬い寒冷紗は、糊を落とすために印刷前に濯いで乾燥させてください。AkuaIntaglioなどの水性インクの場合は、寒冷紗を使用しないで新聞紙やロール紙などの紙だけで拭き取りする方が良い結果が得られることもあります。
Puretchの場合:銅版の腐食が終わったら感光性樹脂フィルムを除去します。銅版を10%の炭酸ナトリウム水溶液に約10分間浸けます。フィルムが除去できたら銅版を炭酸ナトリウム水溶液から取り出して水洗します。(洗剤不要、水で濯ぐだけです。)銅版を乾かし印刷してください。

pdf アクアインタリオの使用方法

[版の掃除]
刷りの後の油性インクの掃除は植物油(サラダ油やオリーブ油など)とウエスでインクを拭いて、その後、食器用洗剤(石鹸)とスポンジで水洗します。
Skylightの場合:有機溶剤、De-Solv-it、アルコール類は、フィルムが溶けるので使用できません。
※AkuaIntaglioなどの水性インクを使用した場合は、版に残ったインクをウエスで拭いた後、食器用洗剤(石鹸)とスポンジで水洗します。

[Skylight のフィルムの除去]
10%の炭酸ナトリウム水溶液または灰汁または約2.5%のアンモニア水で除去します。炭酸ナトリウム水溶液で除去する場合は、版を約1時間浸けておくと剥がれます。もし剥がれたエマルジョンのカスが細かく切れ切れになった場合は、水道に流してしまわずにキッチンフィルターなどで取り除くようにすれば良いでしょう。剥がれたフィルムは消却ゴミ扱いにして下さい。


ポジフィルム(原稿)について
フォトポリマー凹版には、ハーフトーンの細かい画像が必要です。高解像度のビットマップは機能しますが、影の範囲が失われます。 黒のレベルを明るくして、アクアチントスクリーンの露光を必要とせずに、単一の画像で露光して黒を印刷できます。アクアチントスクリーンの露光を使用する場合は、黒レベルを調整する必要はありません。

Skylight: 黒のレベルを約70~80%Kに。

Puretch: 黒のレベルを約90%Kに。


 


露光に於いて、エッチングする場合に用いるポリマーフィルムの厚さの違いによるイメージの再現度

●感光性樹脂層が厚い場合

写真製版

 

●感光性樹脂層が薄い場合

写真製版

 


 


 

< 補足 >

以下の文章は"The Contemporary Printmaker by Keith Howard Intaglio-Type Acrylic Resist Etching" から引用しています。このキースハワード氏の著書には、フィルムの様々な使用方法が詳しく解説されています。ここで使用しているフォトポリマーフィルムはImagOnです。現在は当スタジオでは取り扱っていません。

○クレンザーや消毒用アルコールまたは醤油で脱脂します。
銅版はプレートマークを作って表面を耐水ペーパーや朴炭で磨いた後、脱脂します。

版をピカール(金属磨き)で磨いた後は汚れをしっかり除去し、それから台所用クレンザーとスポンジを使い脱脂します。(版に汚れや油分が付いているとフィルムが剥がれる原因になります。)指の油分がつくのを防いで、素手で版のひょうめんを触らないようにします。
(ピカールで磨いた後は、サラダ油またはD-Solve(インククリーナー)でしっかり拭いて汚れを落とし、その後、食器用洗剤で水洗します。)

○フィルムを貼るためにゴムべらやシルクスクリーン用の15cm幅のスキージーを使う。

○炭酸ナトリウムの量を計るために正確なグラム計量器を用いる。

○現像の後に食酢を水で2倍程に薄めたものを霧吹きで30秒間噴霧して定着させる。

このフィルムは紫外線に特に敏感です。紫外線はスタジオの窓やドアなどから直接間接的に入ってくる。その量は日によっても絶えず変化する。スタジオ内の紫外線の量と作業時間をテストするために、フィルムの半分を銅版などでカバーしてフィルムの色が青く変わりはじめる時間を測るテストを5分刻みで調べれば判ります。
例えば30分で色が変われば、その時間の20%を差し引いた時間以内が適当です。
(日中は、窓のブラインドやカーテンを閉めて部屋の電気を消し薄暗くすれば作業できます。作業に支障のないほどの薄暗さで良い。)

○フィルムはロールから切り取るとカールするが、凹み等傷つけないように慎重に扱うこと。

1.フィルムの内側の膜を剥がすために、ガムテープの粘着面を上側にしてテーブルに貼付けます。そこにフィルムの内側(巻いている内側)のコーナーをを引っ付けます。慎重にフィルムを引き上げて剥がします。手前に引っ張りながら斜め45度に持ち上げるようにすると、コーナー近くの内側の膜が剥がれるので、ガムテープに引っ付けたところを第3の手のようにして、他の二つのコーナーを両手で持って引っ張ります。
その後は出来るだけ早く版に貼らなければなりません。

2.版に霧吹きで水をかける。同様にフィルムのエマルジョン側にもそうする。
ゆっくりと版の端から置いてゆく。もし気泡が入ったらコーナーの一つを持ち上げて外へ追いやるように大部分の気泡が消えるまでそうする。

3.フィルムの表側にスプレーで水をかける。

4.スキージーを中央部分から外側へ向かって動かしながら貼っていく。

すべての水と気泡が見えなくなるまで圧力を増して必要なだけ何回も繰り返す。

5.きれいな布で拭く。

6.フィルムの端を切り落とす。

フィルムが持ち上がるのを防ぐために、プレートマーク部分をカッターを下の方に向かって動かすようにしてトリミングすることが必要かもしれない。

7.電熱器やヘアドライヤー、またはホットプレートで乾かす。

乾燥すればフィルムは版に結合します。
この版は暗い戸棚で保管することができる。

大きい版にフィルムを貼るときと、複数のフィルムを貼るときは水に張ったバットの中に版を浸けてその上にフィルムを浮かべる(雁皮紙を貼る方法のように)。

○1枚以上のフィルムを貼るときはバットの水に入れる前に上のフィルムを剥がしておく。

○バットから同時に版とフィルムを取り出したら、フィルムの表面に十分な水をスプレーする。水を潤滑油のようにしてスキージーで伸ばしていく。ゆっくりと圧力を増して繰り返す。あまり激しく押してしわをつくらないように注意する。

○スキージーまたはゴムべらの10cm~15cm幅を使う。

写真製版 写真製版

○ヘアドライヤーあるいはホットプレートで乾かす。光がフィルムに入らないようにアルミホイルやアルミトレイで覆う。

○版の温度はあなたの手で我慢できるくらいの温度で良い。熱くし過ぎるとエマルジョンを歪めてしまう。

○フィルムを貼るときは多くの水をスプレーする。
○最後にプレス機に通すと版のエッジ部分のフィルムが剥がれにくくなる。(プリントするときと同じ圧力)
○水を使うことは静電気による塵に対処する最高の方法でもある。
○使用する布は起毛していないものを使い、ほこりに対して常に用心深くする。
細心の注意の中でたとえ細かなほこりが入ったとしても刷りに影響することはめったにない。
○フィルムを貼る前に消毒用アルコールで版を拭いて脱脂する。

●現像液
1%の炭酸ナトリウム水溶液をつくるために正確に量を計る。正確なグラム計量器を用いる。完全に炭酸ナトリウムを溶かすために1/4程のお湯でとかしてから水を加える。
現像液の温度は18度~21度です。

●正確な現像液をつくるために
水はph7(中性)、炭酸ナトリウムは無水を使うことを基準にしている。水と炭酸ナトリウムの質によって変化する。(北山銅版画室からお渡しする炭酸ナトリウムは無水です。)

水道水の水質(ph値)は国、地域、スタジオごとに違う。
スタジオごとにテストする必要がある。
(水道局発表では京都はph7.3~7.4です。北山銅版画室では水道水に1%の炭酸ナトリウムを溶かして成功しています。)

現像液で、感光していないフィルムのエマルジョン(乳剤)は13~15分で溶けなければならない。そして、適切な現像時間は9分です。現像は揺すったりこすったりしないで静止させた状態にしておく。

これは現像時間を変えることよりも、水の量と炭酸ナトリウムの量を換えることで調整しなければなりません。

●水道水の質のチェック
エマルジョンが15分~16分間経っても溶けなくて、17~18分ごろに溶けて消えてゆくのは、あなたのスタジオの水道水が硬水であるか、炭酸ナトリウムが弱い種類かです。この場合は炭酸ナトリウムの量を増やす。

エマルジョンが13分以前に溶けたなら軟水の証拠です。現像時間を減少させるよりもむしろ炭酸ナトリウムの量を減らすか、水の量を増やすことです。(10グラムの炭酸ナトリウムに1リッターの水の場合は、8グラムの炭酸ナトリウムにするか、水を1.2リッターにする。)

●現像
露光が終われば現像します。
1. 一番上の膜を剥がします。
剥がし方は版に手のひらを45度くらいに当てて擦ることを繰り返す。
2. タイマーを9分に合わす。(現像時間の"9分"は、エマルジョン(感光性樹脂層)を薄くしなかった場合の時間です。)
3. 版を現像液に入れる。
4. 不必要な紫外線を中に入れないために不透明な蓋でトレイをおおう。
5. 正確に9分間現像する。その間は揺すったり擦る必要なない。静止させておく。
6. 9分後に現像液から取り出し、冷水で洗う。それからライトブルーのエマルジョンの残りかすを取るために水道水のもとで柔らかいスポンジを使って軽く擦る。
7. プレートに酢をやさしく約30秒間スプレーしてエマルジョンを安定(定着)させる。
8. 冷水の中で最終的なすすぎをする。
9. ペーパータオルなどで水気を取る。
10. 版は10分間、65度~93度でドライヤーまたはホットプレートで乾燥させる。
版は手で持てない以上の熱い温度にしない。

出来た版は、紫外線露光と熱く熱せられたので、一晩湿気の少ない場所で保管されなければなりません。

<●銅版をエッチングする(腐食させる)場合について>
エマルジョンを薄くして銅版の表面まで正確に現像されるようにすることで、画像解像度を高める。
1.銅版に貼ったフィルムの上側の膜を剥がし、現像液に7~8分浸ける。
エマルジョンは10ミクロンまで薄くできる。
2.現像液から取り出して、水道水で洗い、現像を止めるために酢を霧吹きでやさしくスプレーした後、水洗する。
3.乾燥させる。
4.少量のベビーパウダーを版に乗せ、柔らかい布でこする。
これで露光する準備ができました。

5.露光したら2分間現像の後、現像液の中で15秒スポンジでこすり、エマルジョンの残りかすを除去する。

(銅版を腐食しないで樹脂版として印刷する場合は、上記のようにあらかじめエマルジョン(感光性樹脂層)を薄くしません。エマルジョン(感光性樹脂層)を薄くしないで銅版を腐食させたい場合は現像時間をもう少し長めにする必要があるでしょう。文字や手描きのイメージなどの比較的単純なイメージは樹脂層を薄くしなくてもよい結果が得られることがあります。)

◆露光時間について

(光源の種類と照射距離と使用する原稿の違いによって著しく変化します。

例:北山銅版画室で使用しているケミカルランプ20ワット8本、照射距離約60cmで15秒から50秒間ほど。

以下の露光時間のデータは海外の特定の機器によるテストなのでこのデーターをそのまま使うことは出来ません。)
1つはメタルハライドランプでもう1つは1000Wクォーツランプの2種類でテストしています。
(機器の名称は省きました。)

そして、7種類の露光に使うメディアとフラッシュという方法の露光時間が記されています。
フラッシュとはアクアチントスクリーンとイメージの両方の露光が終わった後に更に感光性フィルムに直接弱い光を露光する方法です。これは必ずしも必要なことではないですが、こうすることで若干コントラストがはっきりして良い結果が得られるらしいです。

               ハライド(秒)   クォーツ(秒)
アクアチントスクリーン     16-20        200
フラッシュ            5         5-10
描画用フィルムにガッシュ    5-18        100
描画用フィルムにトナーウォッシュ  5-28        100-130
ハーフトーンスクリーン(粗)  15         175
ハーフトーンスクリーン(中)  35         200-300
ハーフトーンスクリーン(密)  45         600以上
オイルドフォトコピー      20-30        225

トナーウォッシュとは、アクリルグランドにトナー等をを混ぜて筆で描画し、墨が滲んだような効果を出す方法です。

ハーフトーンスクリーンは、デジタルインクジェット、または写真用リスフィルムによるイメージをドットに変換したスクリーンのことです。

オイルドフォトコピーは、写真のコピーにサラダ油をしみ込ませてスライドのように透明にさせたものです。

露光の順番はアクアチントスクリーンを先に露光し、そしてイメージの方を露光する。

アクアチントスクリーンとイメージの露光それぞれについてテストする必要がある。1つの版で一度にこの両方をテスト出来ます。

特に手描きで作ったイメージフィルムの場合は、露光時間は描画材料によって微妙に変わります。
また異なる描画材料を併用している場合はすべてにおいて適切な露光時間が得られません。その場合は、
1. スキャンしてデジタルイメージからプリントアウトする方法があります。
2. 感光性フィルムを部分的にステンシルを使うようにカバー(覆い)して、露光時間を変えて露光する。

3. 2つの版を使い、1つをオーバー露光、もう1つをアンダー露光にして黒インクとグレーインクで多版にして刷る。または異なる色の組み合わせで刷る。

 

ご注文方法
版画用品 ノントクシック